近年、パーソナルジムの店舗数は急速に増加し、全国で1000店舗以上が展開されています。市場規模は500億円を超えるとも言われており、フィットネス業界の中でも注目度の高い分野です。特にコロナ禍以降、密を避けられる環境やマンツーマン指導のニーズが高まり、パーソナルジムへの関心がさらに強まっています。
パーソナルジム業界の現状と市場規模
日本のパーソナルジム業界は、高成長が続くヘルスケア産業の中でも特に注目を集めています。市場規模や売上に関連する要素は年々多様化し、業界全体の構造にも大きな変化が生じています。
市場規模の成長と動向
パーソナルジム市場規模は、推定で500億円を突破し、年々拡大傾向にあります。全フィットネスクラブ市場2,689億円(2022年)のおよそ19%をパーソナルジムが占めています。2012年時点で100件未満だったパーソナルジム店舗数は、2023年には1,500店舗程度まで増加し、過去10年で急成長を見せています。
市場成長の要因は3つあります。
- 需要層の多様化:20代~60代女性や中高年男性など年齢・性別を問わず利用者が拡大
- 利用動機の変化:短期ダイエットから健康維持、コンディショニングなどの目的多様化
- 料金体系の進化:高価格短期集中型から月額制やチケット制など、幅広い価格設定
政府統計(経済産業省サービス産業動態調査)でも、コロナ禍からの回復にともなうジム全体の会員数・売上回復傾向が確認されています。ただコロナ前の水準には未達成です。新規参入や異業種からの出店も相次ぎ、地域密着型・女性専用・24時間営業など、店舗形態ごとの市場シェアも細分化が進んでいます。
年 |
パーソナルジム市場規模(億円) |
パーソナルジム店舗数(推定) |
フィットネスクラブ全体市場規模(億円) |
---|---|---|---|
2012 |
50 |
100 |
約2000 |
2022 |
500 |
1,500 |
2,689 |
売上に影響する主な要素
パーソナルジムの売上は以下の要素に大きく左右されます。
- 立地:都市部主要駅近くや住宅密集地で売上が高くなりやすい
- ターゲット設定:女性専用、中高齢者向け、アスリート向けなどニーズ特化で会員定着率が上昇
- 価格・サービス構成:短期集中型(30~50万円/2カ月)、月額制(2~4万円/月)、都度払い型等があり、競争環境や訴求ターゲットによって収益モデルが分化
- 客単価:高単価を実現するには、カウンセリングや食事指導など付加価値サービスが重要
- 稼働率:1ブースあたり月間売上140万円程度が目安とされ、複数ブース展開で売上最大化が可能
- マーケティング施策:SEO対策、SNS広告、WEB集客、口コミ活用が成否を左右
人件費(トレーナー1~3人:30万円/人)や家賃(都市圏で30万~70万円/月)がコストの多くを占めます。固定費の抑制や運営効率化も重要な経営課題です。近年は低価格サブスクリプション型や、特定顧客層への特化で差別化する事例も増加しています。
パーソナルジムの業界構造を理解するには、顧客層分布と各店舗の特徴的な料金体系・指導内容を把握することが重要です。
利用者の年代別デモグラフィックでは、20~40代女性の利用割合が最も高く、ついで30~60代男性が続きます。利用動機はダイエット、健康維持、筋力増強、運動不足解消など多様です。
年代 |
主な利用動機 |
割合(目安) |
---|---|---|
20~40代女性 |
ダイエット、ボディメイク |
40% |
30~60代男性 |
健康維持、筋力強化 |
30% |
50代以上 |
生活習慣病予防、リハビリ |
20% |
その他 |
アスリート、ブライダル、競技力向上 |
10% |
取り扱いサービスの例として、1対1のマンツーマントレーニング、完全個室指導、食事・栄養指導が主流です。売上規模ランキングに多く入るジムは、月額制・短期型・女性専用・都度払い対応・下半身特化など、ニッチな強みに特化し差別化を進めています。
パーソナルジム売上ランキングの見方
パーソナルジムの売上ランキングは、単純な店舗数や会員数だけでなく、さまざまな指標の総合評価によって示されます。売上を正確に比較したい場合、多角的な指標を参照することが効果的です。
ランキングの評価基準
ランキングの評価基準では、店舗規模、トレーナー数、サービス内容、会員定着率などが重視されます。たとえば、1店舗あたりの年間売上は約1,800万円前後が一般的です。
評価軸一覧
- 店舗あたりトレーナー数(例:1〜3名が多い)
- サービスの質(マンツーマントレーニング、食事指導など)
- 客単価(月額制・回数券制の組み合わせ)
- 稼働率・会員維持率(長期継続会員の割合など)
- 顧客評価(口コミ・体験談による満足度指標)
都市部の主要駅周辺で複数ブース型を展開するジムや、女性専用・特定顧客層特化型が上位に多くランクインする傾向にあります。
店舗数と売上の関係性
店舗数が多いジムが必ずしも売上上位になるわけではありません。効率的な運営や高稼働率の達成度が売上に大きく影響します。
実例
- 1店舗1ブース型:月間売上は約140万円
- 1店舗5ブース型:月間売上は約700万円(ブース数が多いほど合計売上が大きくなる構造)
全体として市場規模約500億円のうち、1,500店舗規模が分布し、1店舗平均売上は年1,800万円前後となります。
大手パーソナルジムの場合、規模拡大時でも既存の業績が安定している場合のみ多店舗展開が進行します。
現時点で具体的なパーソナルジム売上ランキングの詳細データは未公開ですが、以下の推計値を参考にできます。
指標 |
数値例 |
備考 |
---|---|---|
年間市場規模 |
約500億円 |
フィットネスクラブ全体の10%前後 |
店舗数 |
約1,000〜1,500 |
大手・中堅で8割を占有 |
1店舗売上 |
約1,800万円 |
トレーナー数・ブース数で変動 |
大手例 |
年商380億円 |
カーブスHD等 |
売上上位のパーソナルジムの特徴
売上上位のパーソナルジムは、優秀な人材、立地条件、設備やプログラムの充実度、そして利用者ニーズへの的確な対応力が際立っています。利用者属性や利用動機の多様化に対応し、特定層に向けた高付加価値サービスも業績に直結しています。
人気ジムの共通点
人気ジムには、以下の共通点が見られます。
- カスタマイズ性:利用者ごとに目標や条件に合わせたトレーニング・食事指導を提供しています。たとえば、30代女性が産後ダイエットを目的とする場合、専用プログラムや女性トレーナーが担当するケースが一般的です。
- 高品質サービス:トレーナーは専門知識と経験を持ち、進捗フォローや個別の悩みに対応します。例として、短期間で成果を出したい会員向けには週2回の集中的指導などがあります。
- コミュニティ形成:会員同士の交流機会イベントやSNSコミュニティによるモチベーション維持も行われており、利用継続率の向上につながります。
- 衛生環境:完全個室や消毒体制など、プライバシーと衛生への配慮も特徴です。
利用者が重視するポイント
利用者の重視ポイントは、次の通りです。
- 効果実感:個別設計プログラムが最速で成果に導くと感じる利用者が多いです。例として、60日で体重5kg減を目指す短期集中型が支持されています。
- プライベート空間:他会員と接触しない完全個室や予約制を求める声が多数です。落ち着いて集中できる環境が選択理由となっています。
- コストパフォーマンス:月額制や回数券による柔軟な料金プランを求める利用者が増加しています。たとえば、16回で約28万円といった回数制パッケージも人気です。
- サポート力:食事・生活習慣まできめ細かくサポートするジムに高評価が集まっています。
パーソナルジム選びのポイント
パーソナルジムの選択には売上ランキングだけでなく、料金やサービス、立地、体験可能かなど複数の視点を組み合わせて判断することが重要です。各要素がジムの売上や定着率、顧客満足度にも大きく影響します。
料金体系とプラン内容
料金体系とプラン内容は、パーソナルジムを比較検討する際の主要指標です。東京都内の主要パーソナルジムでは2ヶ月16回の標準プランが多く使われており、総額の相場は約227,270円、入会金や追加サービス(例:栄養指導)込みで提示されています。
ジムによっては16回176,000円や、2ヶ月264,000円、281,600円(16回)といった価格帯が見られます。料金設定に大きな開きが出る理由は、指導内容や設備、カスタマイズ度、トレーナー人件費の違いによるものです。
一部ジムでは1回ごとにチケット制、月額制、都度払いなど複数の支払い方法があり、自分のトレーニング頻度や予算に応じて選べます。入会金は無料から55,000円など様々で、オプション選択肢や継続割引も比較点となります。指導内容・サービス費用のバランスや目的達成プログラムの適合性も必ず確認しましょう。
ジム例 |
プラン/回数 |
総額(税込) |
---|---|---|
ミヤザキジム |
16回/2ヵ月 |
176,000円 |
THE PERSONAL GYM |
16回/2ヵ月 |
264,000円 |
ビヨンド |
16回/2ヵ月 |
281,600円 |
都内相場 |
16回/2ヵ月 |
約227,270円 |
通いやすさとサービスの充実度
通いやすさとサービスの充実度はジム選びの継続性や顧客満足に直結します。駅近や生活圏内の立地、平日夜や土日祝の営業時間など柔軟な通い方ができるジムは、定着率も高くなります。設備面では完全個室、清潔な更衣室・シャワー、プロ仕様のトレーニングマシンといった快適性や独自サービスが重視されています。
トレーナーの質と配置人数も評価基準です。1店舗あたりトレーナー数は平均1~3名、小規模ジムでは個別対応のきめ細やかさ、大規模ジムでは多様な専門性を提供しています。プログラムが利用者に合わせてカスタマイズされるか、食事・栄養指導など追加サポートがあるかが比較対象になります。
サービスの追加例にはプラン終了後のアフターフォロー、来館予約システム、ウェア・タオル貸与、プロテイン提供、顧客コミュニティ形成といった付加価値も挙げられます。選択基準として自分の生活スタイルやサポート希望に合わせてサービス内容を見極めることが重要です。
今後のパーソナルジム業界の展望
今後数年でパーソナルジム業界はさらなる多様化と競争激化が進行します。利用者ニーズの変化や社会的環境の影響によって、差別化戦略と課題への対応が市場拡大の鍵になります。
サービスの多様化と差別化
サービスの多様化と差別化はパーソナルジムの成長を支える中心要素です。業界全体でボディメイク、ライフプランニング、健康維持、生活習慣病予防など多様なプログラムが展開されています。例えば、特定顧客層(女性、中高年、初心者など)向けの個別ニーズ対応型サービスが顧客獲得・定着に直結しています。
主要都市部では、トレーニング内容や食事栄養指導の質を高めるジム、または短期間集中型からサブスクリプション月額制へとプラン提供方法も多様化しています。2023年度、新規掲載ジムの64%が短期集中型、28%が月額制、8%が都度払い制と分布し、多様な支払いモデルが選択可能です。
また、24時間営業やオンラインカウンセリング、完全個室制、専門ジャンル特化など競合との差別化事例が増加しています。都市部人気店では、衛生対策やコミュニティ要素、カスタマイズ性の高いプログラム導入も進化しています。
業界が直面する課題
パーソナルジム業界が今後直面する課題はコスト管理とサービス品質維持です。運営コスト上昇や価格競争激化により、1店舗あたり年1,800万円前後の平均売上を安定確保する難易度が高まっています。トレーナー人材の確保・教育も経営安定化には不可欠です。
また、フィットネスクラブ業界全体でも利用率が国内人口の3%程度と低水準にとどまっており、潜在顧客の掘り起こしと離脱防止が継続的課題です。アメリカ等と比較し市場成熟度が低い状況ですが、都市集中型競争や地方進出による新規会員開拓も必要です。
競争激化の中でDX化や自動化システムの活用、個別カウンセリングやトレーニング品質のパーソナライズが重要です。新型コロナ以降の衛生対策強化や非対面サービス需要への対応も継続する主要課題となっています。
まとめ
パーソナルジム選びでは売上ランキングだけにとらわれず自分の目的やライフスタイルに合ったサービスを見極めることが大切です。体験トレーニングやカウンセリングを活用して納得できるジムを探してみてください。
今後も市場は進化し続けるので新しいサービスやプランにも注目してみましょう。あなたにとって最適なパーソナルジムがきっと見つかります。